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2024/02/28根管治療の保険と自費の違い
岐阜市にある、あかなべ歯科です。
歯科医院の治療には保険診療と自費診療があるのはご存知かと思います。もちろん根管治療にも保険と自費があり、どちらを受けるかは患者さんの自由です。
しかし、安いからと言った安易な理由で保険診療を進める方がほとんどではないでしょうか?
もちろん費用は重要ですが、しっかりメリット・デメリットを把握した上で治療をスタートしましょう。
今回はそんな根管治療の保険と自費の違いについて詳しくお伝えしていきます。
▪️そもそも保険診療と自費診療の根本的な違いは?
保険診療は公法上で定められた健康保険が適応される治療です。
70歳未満の方は3割負担、70~74歳の方は2割、75歳以上では1割と言った形で年齢が上がるにつれて患者さんの負担額は減っていきます。
一方、自費診療の場合は10割負担、つまり患者さんが年齢問わず全額負担するということです。
▪️保険診療と自費診療の料金負担以外の違いは?
簡潔に分かりやすくお伝えすると、保険診療は必要最低限の治療、自費診療は機能面や審美性、耐久性など、様々な面で優れている治療と言ったところでしょうか。
具体的な例を挙げれば、虫歯治療の際に詰め物や被せ物を行うと思いますが、保険で行う場合、銀歯やプラスチック素材のレジンを使用します。銀歯は見た目が悪く、長期間使用すると金属や接着剤が溶けやすくなったりします。レジンはプラスチックのため耐久性が劣っていたり、着色しやすかったりします。
それに比べ、自費診療の場合、セラミックやジルコニアと言った素材が使用できるため、見た目が綺麗で耐久性も強く、長期間使用することができます。
また、素材以外にも医療機器の使用にも差があります。冒頭で必要最低限とお伝えしましたが、医療機器も同様であり、保険では使用できない機器が自費診療では使えると言った部分も大きな違いです。
(まさに根管治療の保険と自費の違いでは使用できる機器の違いが大きな差になっています。)
このように保険と自費では費用以外にも様々な違いがあります。
▪️実際のところ、根管治療の保険と自費の違いは?
・根管治療の診察における保険と自費の違い
保険診療における根管治療の診察では、口全体のレントゲンや一部分だけ映したレントゲンが一般的で、2次元的な画像でしか確認することができず、撮影した角度によっては歯の根っこや、根っこの奥深くが見えづらかったり、写っていなかったりすケースがあります。根っこの神経は複雑で細く、患者さん一人ひとりによって数、深さ、形状も異なるため、2次元的なレントゲン写真だけで判断するのはかなり難しいと言え、いざ治療を開始してみると思ったより根が深かったり、形状や根の本数が違ったりすることは多々あります。
一方、自費診療ではCTを使用して撮影を行います。CTでは、3次元的に見ることが可能となり、立体的に見ることで歯や骨の状況、どこが炎症しているかや根の本数まで突き止めることが可能となります。
治療を開始する前に、正確な根管の状況が把握できるため、成功率も高くなります。
・根管治療の治療中における保険と自費の違い
根管治療は根管内を無菌状態にできるかできないかで成功か失敗かが決まりますが、保険診療では虫歯部分を大まかに除去した後、そのまま根管治療を行います。すると、根管内に唾液が入ることで細菌感染を起こす可能性が非常に高くなり、無菌状態にすることはできません。
また、実際の根管治療では、裸眼やルーペ(拡大鏡)を使用し、ステンレス製のファイルと呼ばれる先端が尖った針のような器具を使って根管内の汚れを除去していきます。考えて頂ければ分かるとおり、人それぞれ異なる根管内を裸眼やルーペで確認するのには限界があり、歯科医師の感覚や腕だよりになってしまいます。また、ステンレス製のファイルが固く多くの汚れを掻き出せるのが特徴ですが、逆に固すぎて細い根管に届かず汚れが取りきれない可能性もあります。
汚れを取りきれなければ炎症や痛みが再発する可能性も高くなります。
一方、自費診療で行う実際の根管治療では、無菌状態にする確率を上げるため、ラバーダムと呼ばれる天然ゴム性のシートを覆い被せ、治療する歯だけを露出した状態にするため、唾液の侵入を防ぎながら治療が行えます。
また、裸眼やルーペではなく、マイクロスコープを使用します。マイクロスコープは機種にもよりますが、3~20倍まで拡大することができ、照明軸と観察視軸の距離が近くなるよう作られているため、暗くて狭い根管内でも直視しながら汚れを除去できます。そしてファイルはニッケルチタン製が使用できます。ニッケルチタン製は硬い性質でありながら弾力もあるため、根管の隅々まで届くため、保険と自費、どちらの方が根管治療の成功率が上がるかは明白かと思います。
・根管治療で使用される薬剤における保険と自費の違い
根管内の汚れを取り除いた後は薬を根の先に詰めるのですが、保険治療ではガッタパーチャと呼ばれるゴムを根っこに詰めていき、神経を取ったことで空いた空洞を塞ぎますが、ガッタパッチャーだけでは塞ぎきれないケースがあります。また、これは人体に馴染まない性質も持っており、根っこからはみ出した場合、異物と体が判断してしまい炎症を引き起こす可能性があります。
一方、自費診療では、専用の薬剤が使われますが、使用する薬剤は種類があり、根っこの状態に最も適した薬剤が使われます。特に多く使われているのが、MTAセメントやバイオセラミックかと思います。
MTAセメントやバイオセラミックは神経を取ったことで空いた空洞を完璧に塞ぐと共に、強い殺菌効果があり、菌の繁殖を防ぐことが可能になります。
▪️結局、保険と自費の根管治療では成功率はどれぐらい違う?
ここまで見れば、保険と自費の違いは理解できたこと思いますが、実際どのくらい成功率が違うのか気になりますよね?
下の表は保険と自費の根管治療における成功率を表したものになります。
※被せ物を保険にするか自費にするかでも成功率が変わります。
根管治療の精度 |
被せ物の精度 |
根管治療成功率 |
|
Case1 |
⚪︎ 高い精度 |
⚪︎ 自費の被せ物 |
91.4% |
Case2 |
△ 中度の精度 |
⚪︎ 自費の被せ物 |
67.6% |
Case3 |
⚪︎ 高い精度 |
× 保険の被せ物 |
44.1% |
Case4 |
× 低い精度 |
× 保険の被せ物 |
18.1% |
いかがでしょうか?
保険診療か自費診療かでこれだけ成功率が変わります。安易に費用だけで決めるのはおすすめしません。
再発してしまえば再度治療が必要になり、患者さんの負担にもなります。この内容を知らなければ金儲けで自費をすすめているのかと勘違いされる場合も多々ありますが、根管治療を自費で行うメリット、保険で行うデメリットをしっかり伝えなければ、治療が成功しても失敗しても患者さんとの信頼関係は築けないと考えています。